古今亭菊志ん師匠の落語独演会が開催されました!
12月6日土曜日、自動車販売で有名な J. Auto Solutions社 Houston店 の大会議室で、「古今亭菊志ん師匠の落語独演会」が開催されました。
師匠は2012年から毎年ヒューストンに来られ落語公演をされていましたが、昨年は日本での寄席の出演のため、来られませんでした。そこで今年は、万難を排して年の瀬の慌ただしい時期にもかかわらず、ヒューストンの皆様の為に笑いを届けに来てくださいました。
落語はテレビでしか聞いたことがないという方が多いのですが、経験豊富な落語の師匠のお噺を生で聞くと、日本の伝統文化の良さを肌で感じられ、表情の豊かさやしぐさの表現の方法等いろいろな意味で感動します。
生で聴く落語の魅力
落語はテレビでしか聞いたことがないという方も多い中、経験豊富な落語の師匠のお噺を生で聞くと、日本の伝統文化の良さを肌で感じることができます。
表情の豊かさやしぐさの表現方法など、さまざまな点で感動があり、今回は約30名の参加者の前で三つの演目が披露されました。
どの話も情景が目の前に浮かんでくるような錯覚に陥るほど引き込まれ、人情の機微や面白さを存分に堪能しました。
参加者からは「師匠の熱演が素晴らしい」「テレビとは迫力が違う」といった声が多く寄せられました。
当日の演目紹介
今回披露された演目は、以下の三席です。
■ 締め込み
盗みに入った泥棒が、帰宅した夫婦喧嘩を仲裁することになる滑稽噺です。
■ 笠碁
囲碁好きの裕福な旦那衆が、「待った」を巡って大喧嘩をし疎遠になるものの、結局囲碁がしたくてたまらなくなり仲直りする様子を描いた古典落語です。
■ 佃祭
「情けは人の為ならず」をテーマにした古典落語で、人情噺と滑稽噺が混在し、落語家によって演出が異なるのが特徴です。
人助けが巡り巡って自分に返ってくる物語です。
会場の雰囲気
落語の醍醐味は何といっても“生の臨場感”。
参加された方々は時間のたつのを忘れて大笑いし、またアメリカ人で日本語が得意でない方も、師匠のしぐさや表情から落語を大いに楽しまれていました。
師匠からのメッセージ
“「古今亭菊志んです。この度もたいへんありがとうございました。日本人会の皆さまには何とお礼を言って良いかわからないです。おかげさまで独演会を終えたときの『しっかり共感しあえた』という充実感は格別なものがありました!」”
おわりに
大きな笑いとともに、皆様にとって一年の締めくくりとなるひとときになったことと思います。
来年も師匠にお越しいただく予定ですので、今回参加できなかった方もぜひお越しください。
皆様のご参加を心よりお待ちしております。
古今亭菊志ん(ここんてい きくしん)師匠プロフィール(一部抜粋)
広島県広島市出身
教職免許を持ち、学校や親子向け公演でも大人気
米国・インド・豪華客船でも落語を披露
映画・テレビ・舞台・CM出演多数
NHK「超入門!落語 THE MOVIE」、映画『しゃべれどもしゃべれども』で落語監修を担当
演目あらすじ
「締め込み」あらすじ
長屋の、戸締まりされていない部屋の留守を狙って、泥棒が忍び込む。
やかんが火にかかっており、住人がすぐに帰ってくると判断した泥棒は、急いで物色した衣類を風呂敷に包む。
そこへ部屋の主の男(『締め込み』では八五郎)が帰ってくる足音が聞こえてきたので、泥棒は裏口から逃げようとするが、戸を開けると高い塀が立ちふさがっていたため(あるいは、裏口自体がなかったため)、とっさに台所の床板を上げ、縁の下に潜り込んで身を隠す。
男は泥棒が残した風呂敷包みを認め、「古着屋が見本に置いて行ったのだろうか」とつぶやきながら開ける。
風呂敷の中に自分や妻の服が入っていることがわかると、「あの女は、俺の知らぬ間に間男を作って、荷物をまとめて駆け落ちをしようとしているのだ」と勘違いをし、激怒する。
男の妻が帰ってくるなり、男は妻に「出て行きたければ出て行け」と怒声を浴びせる。
事情が飲みこめない妻に対し、男は夫妻の服が詰め込まれていた風呂敷を見せる。
妻は自分の服があるのを発見し、「私の知らぬ間に女をこしらえ、ひそかに贈ろうとしたのですね」と泣き出し、早口で罵倒する。
言い返せなくなった男は、そばにあったやかんを投げつける。
やかんは台所へ飛び、湯がこぼれて床下の泥棒にかかる。
耐えかねた泥棒は飛び出して、
「熱っ!!……待って、落ち着いてください。この風呂敷包みは私が作ったものです」
と白状する。
夫妻は、
「よく出てきてくださった。あなたが正直に話してくれなければ、自分たちは別れるところだった」
と泥棒に感謝する。
「笠碁」あらすじ
ある大店の隠居2人は大の囲碁好きであり、毎日のように互いの家に赴くと碁を打って楽しんでいた。
ある日のこと、今日は「待った」なしで勝負しようと一方が言い出して碁を打ち始めるが、その当人が「待った」をしようとしたために揉め始める。次第に囲碁とは直接関係ない、過去の商売上のやり取りや、大掃除の労いで蕎麦を出さなかったなど些細な話まで持ち出し、言い争った挙句に喧嘩別れしてしまう。
しかし、互いに毎日打ちたいほどの碁好きであり、かといって碁会所に行くほどの棋力もない好敵手同士だったことから暇を持て余してしまう。
やがて「待った」をした方は、相手も同じ心情に違いないと、通りの軒先から見える位置に碁盤を置いて待ち始める。
雨の午後、狙い通り笠をかぶった相手がやってきて内心で喜ぶが、彼はそのまま素通りしてしまう。そこで気分が沈むが、すぐにまた相手が行った道を戻ってきて素通りし、その調子で何度も往復を始める。
予想通り相手も碁を打ちたいのだが自分から切り出すのを恥ずかしがって入ってこないのだが、一方で待つ男の方も自分から声を掛けられない。
結局、照れ隠しで「やい!へぼ!」と呼びかけると、相手も「へぼって何でエ」などと言いながら入ってくるが、碁盤を挟んで向かい合うとすぐに仲直りする。
そしてさっそく碁盤を睨み合いながら打ち始めるが、その上にぽたりぽたりと水滴が落ち、2人は「恐ろしく雨が漏るなあ」とこぼす。
そして顔を上げたところで主人は気づいて言う。
「お前さん、笠被りっぱなしだ」。
「佃祭」あらすじ
神田のお玉ヶ池で小間物問屋を営む次郎兵衛は、夏の佃島で開かれる祭りを楽しみにしていた。
祭りの当日、次郎兵衛は「暮六つ(現在の18時頃)の終い船(渡し船の最終便)に乗って帰る」と妻に伝えて出かける。
佃島に着いた次郎兵衛は祭りを存分に楽しんだ後、乗客でいっぱいの終い船に乗ろうとすると、突然見知らぬ女に引き留められ、揉めているうちに船は出発してしまう。
がっかりしている次郎兵衛に対して女は、三年前に奉公先の金を失くし、途方に暮れた末に吾妻橋から身を投げようとしていたところ、見知らぬ旦那から五両のお金を恵まれて命が助かったこと、その旦那にやっと再会することができてうれしいことを告げる。
さらに女は、夫は漁師でいつでも船が出せるから、ぜひ家に寄っていってくれと頼む。
次郎兵衛が女の家で酒や佃煮など魚料理をご馳走になっていると、にわかに外が騒がしくなる。聞けば、先ほどの終い船が客の乗せすぎで沈没し、乗客が全員溺れ死んでしまったとのことだった。
次郎兵衛はこれに仰天しつつ、自分を引き留めてくれた女に感謝する。
一方、次郎兵衛の自宅では沈没事故の話が伝わって大騒ぎになる。妻と近所の長屋の連中は次郎兵衛が死んだと思い込み、葬式の準備を進め、仮通夜を営んでいる。
そこへ次郎兵衛が戻ってくる。事情を聞いて一同は喜び、呼ばれていた坊さんも、次郎兵衛は女の命を救ったから、それが自らの命を救う形で戻ってきたのだと長屋の連中に説いて回る。
ところがそれを聞いた与太郎は、身投げをしようとしている女に五両あげれば幸運がやってくると思い込み、家財道具を売り払って金を工面すると、橋の上や川沿いで身投げをする人がいないか毎日見張るようになる。
或る日、重そうなものを袂に詰めた女が涙をためながら川へ向かって手を合わせているのを見た与太郎が、女を捕まえて身投げをやめろと告げる。
すると女は、自分は歯が痛くて戸隠様にお願いしていただけだと答える。
「だって袂にたくさんの石が……」
「これは、お供え物の梨だよ!」